突然のハイジ。


午前一時に仕事はじまってすぐに、大学の学生証を持った女の子に、

何時までですか?

と聞かれる。すかさず、

24時間です。

と答えるあたし。

でも、その質問がこの店の営業時間じゃなくてあたしの勤務時間についてなんだと言うことに気づいたのは店を出て行く彼女に、ありがとうございますー、と声をかけているとき。

あたしの終業時間を知って、あの子はどうしようというのだろう?

もしかしてあの子はあたしをこの店内から連れ出してアルムの山に連れてってくれるつもりだったのかもしれない。

たぶんあの子はハイジなんだ。

あたしは車いすに乗りながら子ヤギのユキちゃんと遊び、ハイジとチーズを作る妄想に耽りながら床を磨き、パック飲料を陳列。

ここを出てハイジの村に行けばあたしは車いすから立ち上がることができるんだわ。

そんな妄想に耽ってたら、四時半過ぎにソフトコンタクトレンズの洗浄液を探しに来たお客様に、そこにあるだけで現在はありません、なんて言ってしまう。


本当はあったのに。