お客様に強く手を握られる。

２１時から、おねえさんとふたりで夜勤。

缶コーヒーを一個持ってお客様がレジに来られ、手袋はないか？　と聞く。

ほらもうこんな、といいながら彼は両手であたしの手を握る。

つめたい。

１８キロほど手袋もせずにバイクで走ってきたらしい。

おねえさんが家庭用手袋を探してきてくれる。

あたしは彼の手の中でぬるくなった缶コーヒーをあつあつのあたらしいものに交換してあげる。

彼はうれしそうに缶コーヒーと手袋を持って店から出て行った。

せっかくだから流しのシンクのところでお湯出して手を温めさせればよかったかなと思う。

そこまでしたなら彼はきっとこの店の虜。

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